遅れ先立つほどへずもがな

  きらきら輝き覚えた 君を見上げるように

いわゆる今話題になっている増税について

本日(2023年7月25日)の報道で政府税調の中期答申に関して岸田首相は「『サラリーマン増税』うんぬんといった報道があるが、全く自分は考えていない」と述べたと産経新聞の記事(Yahooニュースの転載分)にありました。
確かに答申の内容の当該部分を見ると税金の項目と論点が列挙されていて、今すぐ増税せよと書かれているわけではないようです。しかし、政府税調はもともと上記の整理に関するお墨付きを与えるのが主な役目であって、その細部に至る内容は当然財務省により作成されているはずです。少なくとも私がウォッチしてきたこの種の政府の委員会や諮問機関は委員の反対意見は考慮されてはいても概ね主管官庁によりその内容が整理されており、その意図が形になったもので、すなわちこのように法律の改正や整備を進めて行きたいというそのものズバリの方針です。
そもそもこの答申は首相その人から政府税調に諮問されており「人口減少・少子高齢化、働き方やライフコースの多様化、グローバル化の進展、経済のデジタル化等の経済社会の構造変化を踏まえ、成長と分配の好循環を実現するとともに、コロナ後の新しい社会を開拓していくことをコンセプトとして、新しい資本主義を目指していく。こうした観点から、持続的かつ包摂的な経済成長の実現と財政健全化の達成を両立させるため、公平かつ働き方等に中立で、新たな時代の動きに適切に対応した、あるべき税制の具体化に向け、包括的な審議を求める。」により審議されたものです。だから、答申の内容について「考えていない」ということはあり得ない(文字や文章が読めない、あるいは読めても内容が理解できないのでなければ)はずで、それを考えると先の発言は既に誠実でない答えのように思います。本来は考えた結果、するのかしないのかを明言するか、さらに(誰と検討するのか知りませんが)検討を続けるのかをはっきり答えるべきです。そうでなければ、今この時点では考えていないが明日考え出したらサラリーマン増税を即実行(実現)することになったという可能性は否定されていません。
これが一国の首相の答え方なのでしょうか。考えていないではなく「(いわゆる)サラリーマン増税は行わない」と答えるのが誠実というものでしょう。消費税にしても何度かそれ以上の増税はないと答えておきながら、財務省の言いなりになる首相や担当政権のときに国民をだまし討ちにするかのように増税を続けてきた国です(さらに目的税であったはずなのにいつの間にか一般財源化されている)。ガソリンの二重課税もトリガー条項を無効にする法律を作ってまで、トリガーを引かせないようにするなど、目的は増税でしかない政策を財務省は作ってきたのです。先の首相の答え方も(いわゆる)サラリーマン増税を考えていないだけで、その名を冠さない増税をサラリーマンに課すことは否定していないということは、いずれ行われる(増税される)というように考える方が自然と言うものです。
ところで、政府税調の答申を読んでいると、いかに担税力があるか、それに対してどのような理由で課税可能か、あるいは課税のために整理することは何かというような、税金の取り代を砂金すくいのように細部にわたって検討しているようです。特に気になったのは相続税部分の記述「また、生涯所得のうち消費しきれなかった部分が相続財産となることを踏まえれば、消費税とともに生涯所得全体に対して適切な負担を求める観点からも、相続時点での課税の役割の重要性が増しているという考え方もあります。」という表現は人間は裸で生まれて、人的控除の範囲内で成長して行き、それを超える必要な費用は贈与であり、すべての財産は自分一人で築いて行かなければならないという大原則が垣間見えるように思います。とすれば親や夫婦、子供の無形の役割はすべて税制的には人的控除の中にしかないものとなり、私たちの実感とはかけ離れたところにあるというべきでしょう。政府税調が考えるべき(検討すべき)ことは、人口減の状態下でこの国が持続的に存続するためには税を含めた社会制度がどうあるべきかであって、単にどこから税金が取れるかを考えることではないように感じます。

(4,873)