遅れ先立つほどへずもがな

  きらきら輝き覚えた 君を見上げるように

退職一時金課税の見直しについて

退職一時金に対する課税方法の見直しが議論されるようです。理由は現行の制度では長期間同じ会社に働いているほど一時金に対する控除額が多くなって、結果として課税される額の支払われる一時金の額に対する比率が下がるから、長く働くことが前提(有利になる)として設計されているのが問題ということのようです。とか何とか理由をつけていますが、実際のところは増税したいのですよね。
ご存知のように退職一時金Aに対する控除額Bは勤続20年までが40万円×勤続年数、20年を超える部分についてはこれに70万円を掛けた額が追加されることになっています。実際の税額の計算には一時金から控除額を減じた額に1/2を掛けたものが退職所得になり、その退職所得の額の多寡に応じて所得税率Cと控除額Dが設定されており、結局のところ(A-B)×1/2×CーDに復興特別所得税の増分1.021を掛けたものが退職一時金課税額(所得税)となります。また住民税に関しては一律10%なので(A-B)×1/2×0.1です。
退職金は給料の後払いという性格も持っていますから、将来にまとめて支払われる退職一時金の(大きい)額に対する高い税率がかかるというのは明らかに不合理であり、20年以上か否かの条件はさておき、遡って支払われるべきであった対価に対する税金としての性格上、現行の制度でも著しく不公平であるとは言えないと思われます。
新しい制度がどのようになるのかわかりませんが、今後20年以上同じ会社で働くということは普通考えにくいので、政府(財務省)が考えているであろう増税を念頭に置くと、20年以下の勤続期間における税金は高くなると考えるのが順当でしょう。そして、労働力の流動性を極限まで高めることを目的とするなら、累進性を今以上に高めていくのではないかと考えられます。これにより退職金を支払う会社には長く勤め続けるほど損になるため、会社が労働力を確保するためには退職金を止めて賃金に上乗せすることも予想されます。
実はこの制度改革は現在の労働者よりも既に年金で生活している者にとって、より厳しい結果になるかもしれません。というのもあのマクロスライドという制度によって、既に受給している年金は物価ーマクロスライド分で決定され、その時の労働者賃金は反映されないからです。
だから私のように既に退職一時金を受け取ってしまい、給料も含め将来に受け取る可能性がないものにとって、この制度の見直しは対岸の火事ではないかもしれません。高みの見物と思っていたら、足元に火が点いていたというのは笑えない事態です。
年金生活者の生活を守る党」なんていう政党が出てきて、上記の懸念を払拭してくれるなら私は全力で投票したいと思います。(繰り返し言いますが私はまだ老齢年金を受給する年齢に達していないので、今のところ恩恵はないのですが)
縷々書いてきましたが、上記の課税の影響は退職一時金の額と勤続年数によって変わりますので、さらに制度を変更した場合の試算をしたわけではありません。私が自分中心に心配していることを書いただけです。だからもちろん杞憂であればそれにこしたことはありません。ただし最近の税金+社会保険料の増加傾向をみていると、現在の実質的七公三民から八公二民へと役人・企業経営者中心的共産主義社会への完成により近づくのではないかというのはもはや杞憂とは言えないでしょう。新自由主義とその制度を守るための組織と制度の固定化は共産主義的であるというのが、まったく経済の素人である私の考えです。そうでないなら誰か教えて!

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